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「十三本の松」他3話 松と日本人から

・「十三本の松」 中島源
 大正15年に徳島県庁舎の近代的庁舎建築のために樹齢300年を経過した北浜の松の伐採を反対した徳島県立商業高校の教師の話である。先生は立木の所有権登記をして大枚千円で松を買い取り安心したが、立場を失った県の役人から「松林の堤を壊してしまった台風が来れば松の木が倒れて家が壊される」と住人から申し出があったと難題を突きつけられ、堤を元のように修復し、さらに千円の経費を負担した。

当時の先生の月給が百五円でしたが、その中から弟の学資と不景気で学資のできない二人の学生の面倒も見ていて、残りは月五十円あまり、二千円もの借金の利息の支払いに困窮し父が困難して作った田地3へクタールを売却し、筆舌に絶する苦難の末、父が兄に残した財産の大部分を人手に渡し十三本の松を救った。

この松は、不運にも昭和20年7月に先の大戦の徳島市大空襲で焼失してしまった。先生は、その思いを二句の歌に託して残されている。

 千代までも栄ゆるものと思いしに あわれかなし北浜の松  

    北浜の松を思えば袖ぬらす 渭の山かげに雨は降らねど

・「松と森林」 喜多正司

古来松は日本人の生活と密接に関係しており、およそ国土を論ずる者は松を抜きにしては語り得ない。いわば日本国土のシンボルマークの一つと言っても、過言ではな位くらいに考えられてきたのである。そうした松の木が、もしも全滅し、幻の木ともなるような事態になれば、まさに一大事と言わなければならない。。。

私は、今でも緑滴る松の林、雑草も見事に刈り取られて、秋には香り高い松茸が頭をもたげるという、いかにも日本の風土にふさわしい松林が生まれることを、念じてやまないものである。

・「松といのり」奥田孝

日本人にとって最も大切な木である松が。いたるところで、こんなひどい枯れ方をしているので。心を痛めずにおられようか。私はこの現象を、日本人の心の危機を告げる、天の啓示と受けとめ、松を守ることは即ち、日本人の心を救うことだと信ずる。それはむしろいのりに似た気持ちである。

・「松寿」   田嶋一雄

 太陽、空気、水、そして松。いつも私たちの身近にあって、私たちを守り育ててくれる大切な神様達です。あまりにも身近に存在するためにややもすればそのありがたさを忘れがちになっております。人類を守護してくれる神々を大切にするように、私たち自身はもとより、子々孫々に教え継がねばならないと思います。。。

人類の守護神である太陽、空気、水、そして松の緑をもっと大切にしたいものだと思います。松のいのちは、人のいのちを守ってくれるからです。