ヤクタネゴヨウ|日本の松7種図鑑

日本の松7種図鑑のヤクタネゴヨウ

JAPAN PINE ENCYCLOPEDIA · 07 · FIVE-NEEDLE PINE

ヤクタネゴヨウ

Pinus amamiana Koidz.

屋久島と種子島に残る、日本固有の五葉松。限られた島の森に生きる姿は、松の多様性と保全を考える入口になります。

ヤクタネゴヨウ・日本のマツ属植物図鑑。針葉の束、見分け方、生育地、文化を解説する図解
ヤクタネゴヨウ・日本のマツ属植物図鑑。針葉の束、見分け方、生育地、文化を解説する図解

FEATURE 01

葉は5本ずつ

針葉は短枝に5本ずつ束生し、長さはおよそ5–8cm。五葉松の仲間であることを示す大切な特徴です。

FEATURE 02

二つの島だけ

自然分布は鹿児島県の屋久島と種子島。島という地理そのものが、この松の物語の一部です。

FEATURE 03

絶滅危惧IB類

環境省では絶滅危惧IB類(EN)。生育地が限られ、枯損や次世代更新など複数の課題に向き合う保全対象種です。

DISTRIBUTION & HABITAT

屋久島と種子島。
島が分布図になる松。

ヤクタネゴヨウはマツ科マツ属の常緑高木です。九州森林管理局は、屋久島と種子島にのみ自生し、樹高30m・幹径2m以上に達する個体があると紹介しています。

屋久島では複数の自生群落が知られ、種子島でも希少個体群保護林を含む生育地の保全が続けられています。

IDENTIFICATION

どこを見る? 五つの観察点。

01 葉の束

5本ずつ束になる針葉。

02 葉の長さ

およそ5–8cm。

03 球果

卵形〜卵状楕円形、約5–10cm。

04 樹形と幹

高木になる樹形と枝ぶりを観察。

05 場所

自生地が屋久島・種子島に限られる点。

観察マナー:希少種の自生木は採取せず、枝・葉・球果を持ち帰らないでください。写真と記録で観察しましょう。

CONSERVATION

「珍しい松」で終わらせない。

マツ材線虫病

種子島では枯損への対策として、モニタリングや成木への薬剤樹幹注入などが行われています。

次世代の更新

稚樹の更新阻害への対策、生息域外保存、更新サイトの検討が続いています。

PINE ART MUSEUM · EXHIBITION 06

島に残る記憶 ― ヤクタネゴヨウ

標本を「資料」ではなく、島の森から世界の植物学へつながった記憶として見る。松の美術館では、第1〜6展示を通して7種の松を別の角度からたどります。

松の美術館・全6展示へ →

図鑑メモ

和名
ヤクタネゴヨウ
学名
Pinus amamiana Koidz.
科・属
マツ科 Pinaceae・マツ属 Pinus
生活形
常緑高木
自生地
屋久島・種子島
葉
5本束生、約5–8cm
球果
卵形〜卵状楕円形、約5–10cm
保全
絶滅危惧IB類(EN)

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BOTANICAL FIELD GUIDE / 詳しく知る

ヤクタネゴヨウを深く知る

屋久島と種子島に残された固有の松

ヤクタネゴヨウは、鹿児島県の屋久島と種子島だけに自然分布するマツ科マツ属の常緑針葉樹です。五本の針葉が一つの束になる「五葉松」の仲間ですが、国内の一般的なゴヨウマツと同じ樹種ではありません。限られた島々に隔離されて生き残ってきたこと自体が、植物の分布や進化を考える大切な手がかりです。

学名が教える分類の歴史

現在、キュー王立植物園の「Plants of the World Online」は Pinus amamiana Koidz. を独立した種として採用しています。かつては Pinus armandii var. amamiana として扱われた文献もあります。表記が異なっても必ずしも別の植物を意味するとは限らないため、古い図鑑や論文を読むときは学名の取り扱いと刊行年を一緒に確かめましょう。

五本葉だけでは終わらない観察

初めて観察する際は、一本の短枝から出る針葉の数に加え、針葉の長さ、球果の形、幹の樹皮、立地や周辺の植生を記録します。ヤクタネゴヨウでは実物に近づけない場合もあるため、保全上の配慮を優先し、公開された標本・植物画・学術写真と照合する方法が有効です。掲載した標本は針葉と枝の形態をじっくり見るための資料です。

希少な木を守る、二つの課題

過去の伐採利用に加え、マツ材線虫病による枯損や、若木が十分に育たない「天然更新の不足」が保全上の課題として報告されています。林野庁や森林総合研究所などでは生育状況の調査、病害への対応、種子や苗木を用いた保全に取り組んできました。野生個体の位置をむやみに拡散せず、専門家や現地保全活動の記録から学ぶことが、希少種を紹介するサイトの責任でもあります。

根拠:Kew POWO(学名・分布)/林野庁・種子島ヤクタネゴヨウ保護林/森林総合研究所・種子保存と発芽

参考資料