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「炭と菌根でよみがえる松」小川真著

炭と菌根でよみがえる松 小川真著 (2007年発行)

白い砂浜に青々と茂るマツ「白砂青松」は、日本の原風景の一つとして、古来詩歌に詠まれ、絵に描かれ、私達の目にしっかりと焼きついてきました。その松林が今や日本の海岸から姿を消そうとしています。日本の風景を代表とする白砂青松が消えるのを目の当たりにすると国土ばかりか、人の心までが蝕まれていくような不安に駆られます。

2006年4月2日。「白砂青松再生の会」立ち上げ

白砂青松再生の会の目的

第一の目的防災と海岸線の維持のために、海岸林が大切である
第二の目的地球温暖化防止活動に具体的に参加する
第三の目的危急存亡に備えて、いつか資源林のもとになってくれるマツ林を遺しておく努力を続けなければならない
第四の目的地域にとってマツやマツ林は大切な観光資源でもあり、「マツが枯れるのは仕方がない」と言ってはいられない、松林を守り育てる事は地域の暮らしを守ることにつながる。
第五の目的未来の地域環境のために。子々孫々のために。今すぐできるところから、少しづつ松林再生のための作業を始める。子供の心に自然の大切さと人のために働くことの尊さを伝えること。

目 次
1章 ことの始まり、ショウロと炭
2章 湘南海岸ークロマツとキノコ
3章 九十九里浜ー北上したマツ枯れ
4章 一ツ葉海岸ーマツ林を守る大実験
5章 虹の松原ーマツと人との共生
6章 鳥取砂丘と東海村ー砂丘とクロマツ林
7章 丹後の函石浜ー白砂青松再生の試み
8章 出雲大社ー炭と菌根でよみがえるマツ
9章 気比の松原ー気がかりな大気汚染
10章 天橋立ー台風に倒れたマツ
11章 明砂十里ー韓国のマツ

付録ーマツの健康診断
相談に乗っていただける企業と団体

 

8章 出雲大社ー炭と菌根でよみがえるマツから

炭の役割と効果(付録から)
木炭を土に埋めると、土の中に空気と水を豊富に持った空間ができ土の性質が改良されます。保水力が高まり、酸素を蓄える空間も大きくなり、肥料成分を長期間蓄える能力が上がります。特に粘土質の土や砂のように保水力の弱いものを改良する効果が大きいです。炭はアルカリ性が強い為、化学肥料で酸性化した土を中和し残留農薬などの有害物を吸着します。
炭にリンやカリなどの養分があると植物の根が炭を抱きかかえるように、盛んに枝分かれし根が増えるだけでも植物の育ちがよくなり、病気や虫に対する抵抗力が高まり地上部の成長も良くなります。
多くの植物は中性土壌でよく成長しますが、中にはアルカリ土壌を好むものは、クロマツ・ナンテン・ハシバミ・カシワアカマツ・ツツジ・クリなどは酸性土壌でよく成長します。カビやキノコの多くも酸性条件を好みます。
そのため、アカマツは炭に木酢液を染み込ませて使うと弱酸性になり木酢液の効果とあいまって、よく効きました。
※これは炭窯の性能、温度や炭の種類、材料の種類によっても違うようですので、一概には言えませんが。。

出雲大社で行われた炭の撒き方(画像くりっくで拡大)

付録ーマツの健康診断から

松の枯死とその症状地上部の診断

微害型マツ林の中で枯死木がまばらに発生、枯れがゆっくり進行するタイプ
この枯れ方は、手入れがよく行われていたところや、土壌が貧栄養状態のところで見られる。老齢木や成長の良い木から枯死し若木が生き残る
激害型枯れが入り始めると、樹齢を問わずに松が枯死し野火のように周辺に急速に広がるタイプ
マツノマダラカミキリによって伝播されるマツノザイセンチュウによるマツだけが選択的に枯死する特異的な病気である

頓死型一見元気そうに見えた木が数ヶ月のうちに枯死する
特に成長期の夏、乾燥が関係して起こる枯死で、例外なく根に問題がある。
地上部と地下部の成長のバランスが狂っている場合が多く、土壌が富栄養化して主根が異常に伸び細根や菌根が減り、同時に幹や枝が太り、シュートも異常に伸長し、葉は長くなり、葉の色も黒ずんで、地上部だけが大きくなる、いわゆる肥満体です。若木ほどこのようになりやすく、最近はマツの肥満児が増えてきている。樹齢の高い木でも梢端が徒長してひょろひょろ伸びた枝が多くなると、蒸発量が給水量を上回り、水切れが起こり枯死する。
衰弱死型自然林だけでなく、庭園樹や並木や海岸林でも見られ放置すると数年で枯れてしまう。踏圧や肥料のやりすぎ、除草剤や殺菌剤などの薬剤の過剰散布など、原因はいろいろですが、いずれも根の損傷がひどく菌根や吸収根がなくなっている点が共通です。衰弱死はゆっくり進行し、枯死の4,5年前から症状が根から始まり、芽、葉、花、球果で顕著になります。土壌中で細根や菌根が減ると、小枝の数が減り、雄花や雌花が増えます。根がなくなると養分吸収力の低下となり、防衛反応として、枝を減らし葉を落として蒸発量を下げ、子孫を残す為に花をつけます。雄花が増えると、葉の量が減り、雌花が増えると胚芽の数が減って枝と葉の量が減ります。その結果、炭酸同化量が減り根や芽が再生するための貯蔵養分が減り、樹勢が衰えます。

他にも、土壌と根による診断やキノコと菌根による診断が本にはあります。